リハビリ

 ある程度生活に慣れてくるとリハビリがはじめられる。

 最初はPT(理学療法士)からであった。

 まず、担当医からリハビリの先生を紹介され、挨拶も兼ねて今後どういう方向で訓練していきたいか、今までしてきた訓練の確認を含めて話し合う。

 それから、稼動域(かどういき)を確認する等して、後日先生に日時と場所を指定され、看護婦に連れて行ってもらい、訓練がはじめられる。

 最初は高さのあるマットに仰向けに横になり、横を向いたり、横を向いたまま、足を引っ張ったりしていた。

 訓練の最後には平行棒で歩いていた。

 途中から立ち上がりと座るのを交互に、100回くらいしたりしたものだ。

 おそらく、立ち上がった時に「膝崩れ」といって立ち上がった時に膝にかかってくる力に我慢出来なくなり、「カクン」といっておれてしまい転んでしまう事の無いようにそういう訓練をしてくれていたのだと思う。

 その後、横になったマットに仰向けになり、そのマットが立ち上がって、足のかかとに三角形の台を入れて、5分間同じ姿勢で立ち続けるという訓練をやった。膝が浮かないようにマジックテープのベルトで巻かれて留められて立っているのだが、かかとからふくらはぎにかけてつるような感じで結構痛い。

 頭も辛くて、たまに貧血を起こしそうになったりしたものである。

 その度に先生がやってきて、「おい、大丈夫か?」と声をかけてくれたたものである。

 しばらくしてPT(理学療法)に慣れてくるとOT(作業療法)が同様にして始まる。

 まず指定された日時に作業療法室に行き、当分は一通り先生から与えられた課題を行うのだが、時間通りに行っても、先生が他の患者で手一杯らしく、なかなかやって来ない事が多々あった。

 ずっと待っていても、らちがあかないので、自分から先生を探して、「来ました。今日もよろしくお願いします」と積極的に挨拶をして課題をもらうようにしていた。

 課題とは主に、色のついた積み木を渡された絵の通りに並べ変えたりするというものであったり、色のついたピンがボードの端に数列程決められた配置で並べられているのを別のあいている場所に同様に並べるというものであったりした。

 そのうち、大久保病院でやったように、タオルの上に両手を乗せ、雑巾がけのように腕の伸縮を100〜200回やってから、48ピースくらいのパズルを組み立てたりもした。

 プラスチック製の小さい穴が大量にあいているシートに刺繍をするように、色のついた糸を通していき、ポーチを作成した事もあった。

 またこのOT(作業療法)では、入浴の際一人で体を効率的に洗う方法も訓練した。また装具(片麻痺の人が使う足を補強する器具)ができあがってから、装具を一人で履く訓練もした。

 面白かったのがもぐら叩きゲームで、1.5m四方の板一面にゴムのボタンがせり出ていて、ライトが点灯した部分を専用のハンマーで叩くというものであった。結構得意であったが、半則無視(目で見えていても視界の半分を脳が見落としてしまう。)のため、なかなか満足のいく好成績に辿り着けなかった。

 他にPS(心理療法)というリハビリもあり、私はそれが一番好きだった。

 社会的に常識的な質問をされたり、数字がランダムに書かれている紙の中から言われた数字だけに印をつけていくという等のクイズのような課題が多く、クイズ好きの私にとっては楽しめる時間となったからである。

 しかし、課題の中には一つの絵を指示された場所に同様に写すというものもあり、傷害のため苦手となってしまったこのような分野は、その後の課題として残ってしまった。

 ある日、PT(理学療法)の先生に一人の実習生を紹介された。

 名前をYさんと言い、先生が手一杯の時などは、私の面倒を見てくれたりもし、また病棟に見学がてら様子を見にきてくれる事もあった。

 彼女とはかなり仲良くなり、平行棒での歩行の際には、歩く姿勢までチェックしてくれるようになっていた。

 先生が手一杯で実習生に「あれとあれやっといて」と課題を与えて長い間場を離れ、私と彼女だけになる場合は大体2人で相談しながらやっていた。

 他にも実習生が数名来ていたようだが、彼女をきっかけにして、他の実習生と仲良くなり、実習最後の日に、先生方がお礼にセレモニーらしき事をしている席に参列させてもらい、前もって用意していたお礼のプレゼントを手紙と一緒に渡して別れた。


 その後退院してからだが、彼女からおめでとうメールが届き、返事をしたもののそれっきりとなってしまい、現在は音信不通だが、彼女は卒業しPT(理学療法士)になれただろうかとたまにふと頭をよぎる。

 OT(作業療法)で着替えの練習もして、多少の問題点を残しつつある程度自分でできるようになったある日の朝、自分でパジャマから日中の活動服に着替えようとしていたら、ズボンを履こうとして前かがみになり、あと少しのところでお尻がベッドから落下してしまい、ナースコールを押すか押さないうちに「ドスン」という落ちた音を聞きつけた看護婦が飛んできて、元の姿勢に戻してくれて着替えさせてくれ、難を逃れたのだが、この一件がOTの先生に伝わってしまい、それ以来ベッドの下に足が滑らないように台が置かれ、あまり転んだりバランスを崩すという事も無くなり、そのうち多少ならばベッドの上でも着替えられるようになっていった。

 その他、毎週日曜日の14:00から「立ち上がり訓練」という、病棟の廊下に患者が皆出て車椅子から立ち上がり10秒数えるという行事?があり、日曜日あまり外出する事が無かった私は積極的に参加した。

 廊下には壁側に手摺が付いており、そこに掴まって立てるようになっていた。

 そこで訓練を行うのだが、時間間近から良い場所近辺が混み始めてくる。

 そしてなかなか始まらず、散々5分くらい待たせた後やっと始まるのである。

 それが終わると軽い疲れを覚え、よく冷蔵庫にある乳酸菌飲料を取りに行き、ルームメイトの人達にご馳走したものだ。

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