台湾居候記 2/8

 台湾はバイク大国。車も多いがバイクも多い。自転車など一度見たか見ないかという程度。しかも子供が運転できる年齢になるまでは一緒に乗るより他無いということらしく、二人、三人乗りは当たり前で、四人乗りというのもあった。
 私自身も峻榮氏と移動するときはよく彼のバイクの後ろに乗ったが、形はスクーターのようでも125ccで、時速90kmでぶっ飛ばすのでおそろしいものだったが、段々慣れてきて写真を撮る余裕も出てきた。
 次の日、峻榮氏の友人でコンピュータ関係の営業をやっているという林さんの家に。買ったばかりのPowerMac G4がネットに繋がらないのでなんとかしてくれという事だったが、中国語版のOSに四苦八苦。プロバイダも二つしかなく、接続方法も少々変わっていて、大変。
 林さんの家はマンションで建物も新しく、この中にいると台湾にいることを忘れてしまうのだが、窓の外を見れば、目の前に古い農家があり、山にはお墓が点々としているのだった。
 そのまま林さんの車で駅前の規模の大きい市場に行くことに。ふと外を走るバスの車体広告に目が止まる。日本語雑誌の発刊を知らせる広告で、おもしろそうなので私も一冊買ってきた。『日語菜菜子の第一句』とあるが、台湾では松嶋奈々子の人気が高いのでこんな名前だとか...
 再び奇妙な日本語の看板。『京都桂離宮大湖水岸皇居生活 軽井沢』とある。帰った次の日の朝日新聞のコラムにこの看板のことが出ていて、高級マンションの広告であることが分かった。大湖水岸は峻榮氏によれば台湾のリゾート地だとか。
 その下には『山葉電子琴』とある。日本のヤマハは山葉さんが作った会社だということだから、こちらの方が日本よりも正しいの、か。
 その駅前市場。ここで彼らに勧められたのが、アヒルの首から上の部分『東山鴨頭』。くちばしもついて気味が悪かったが、首、脳、舌とどこも美味。特に舌は(くちばしを上下にこじ開けなければならないが)漢方薬にも使われるそうで、非常に体に良いとか。
 ここまでのつまみ食いでかなりお腹が一杯になっていたのだが、これが今日の夕食。カキの入ったお好み焼き。正直二日目にしてこの三食こってり濃い味に辟易していて御飯と味噌汁が懐かしかったのだが、当然の事ながらこの二人はよく食べる。胃の構造が違うのか...
 
 デザートにと食べたのが、かき氷。杏仁豆腐やら数種類の具を選ぶと、それを皿に載せてその上から氷をかけてくれる。見たところ氷の山なのだが、それをザクザクと下までかき分けて食べる。もの凄い暑さなのに台湾には冷たい食べ物が少ないので、こういうものは本当に救われる。
 アメ横風の商店街。凄まじい人手と飛び交う売り手の声。この靴屋の呼び込みは、いかつい顔で頭にハイヒールを乗せて大声をはりあげている。
 その名も『檸檬汁』と書くレモンジュース屋も至るところにあって、そのレモンと氷を浮かせたディスプレイで歩き疲れた客を呼んでいた。
 このレモンジュースに限らず台湾の飲み物は何でもかんでも砂糖が入っていて、気持ち悪いほど甘い。あまりに甘いので、口直しにと烏龍茶を買ったらこれにも砂糖が入っていた。
 一通り屋台と商店街を廻った後、林さんのお友達とスターバックスでコーヒータイム。台湾の今後について熱く語る姿を見ると、国の年齢ということについて考えてしまう。日本はもう老年期に入って元気がないのだ。
 林さんの車に戻ろうと先程の商店街に通りがかると、異様な雰囲気。警官が数人、怒鳴りながらバイクで来るとそれまで何十と道に出されていた屋台が潮が退くようにどこかへ。下肢が不自由なチケット売りの男は手で車椅子を押してなんとか逃げ切る。それまでの喧噪が嘘のように消えて、人をかき分けて歩いていた商店街は閑散となる。路上の屋台は違法だったのだ。
 気が付くと峻榮氏と林さんは消えていた。ついつい野次馬根性でシャッターを切ってしまっていたが、巻き込まれたらどうするんだと後で峻榮氏には怒られた。